個人版事業承継税制と医療法人化

株式会社への法人化

個人版事業承継税制において、特定事業用資産のすべてを現物出資して、会社を設立し、その株式を保有し続ければ、納税猶予は継続されます(措法70の6の8⑥)。つまり、個人事業を株式会社化したとしても、納税猶予は打ち切られないということです

措法70の6の8⑥

第四項の場合において、同項の事業の用に供されなくなつた事由が特定申告期限の翌日から五年を経過する日後の会社の設立に伴う現物出資による全ての特例受贈事業用資産の移転であるときは、当該特例受贈事業用資産の移転につき、政令で定めるところにより、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときにおける第四項の規定の適用については、当該承認に係る移転はなかつたものと、当該現物出資により取得した株式又は持分は第一項の規定の適用を受ける特例受贈事業用資産と、それぞれみなす。この場合において、当該承認を受けた後における第三項、第四項、第十四項及び第十六項から第十八項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

医療法人への法人化

個人開業医も、個人版事業承継税制の対象となっていますが、医療法人化、つまり持分なし医療法人化した場合はどうでしょうか。

措法70の6の8⑥は、会社が対象の規定であり、医療法人は配当ができないため、会社ではありません。さらに、現物出資した特定事業用資産を「株式または持分」に転換する必要があります。

しかし、現在は持分なし医療法人しか設立できません。つまり、医療法人化すると、措法70の6の8⑥の適用はなく、個人事業はなくなるので、納税猶予は打ち切りになります

なぜ医療法人化で個人版事業承継税制が打ち切られるのか

個人版事業承継税制は、厚生労働省も平成31改正要望としてあげていました。さらに、自民党税調の宮沢洋一会長も、個人立の病院も想定していたと語っていました。それなのに、なぜ医療法人化により打ち切られる制度にしてしまったのか。

考えられるとすれば、持分がないため、株式会社とのバランスを取りながらの制度設計が難しかったのではないかと思います。なお、基金は債務であり、持分とは全く性格が異なります。

顧問先への説明では、個人版事業承継税制を適用した場合、後継者が将来の医療法人化すると、猶予税額を一括納付しないといけないと伝える必要がありますね。

これで、個人版事業承継税制を適用できるイメージが全くゼロになってしまいました。地方の酪農家ではニーズがあるのでしょうか。

令和3年度改正要望(厚生労働省)

厚生労働省が令和3年度改正要望を出しています。

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