理事長のみに社宅がある場合

理事長だけに社宅を貸与

理事長にのみ社宅があり、従業員のための社宅はないという事例です。株式会社でも、社長にのみ社宅があり、従業員には社宅制度が用意されていないということはよくあると思います。安全に判断すれば、次のような見解になります。

・医療法人の取扱い

 社宅家賃が毎月定額のため、定期同額給与で損金算入

・理事長個人の取扱い

 理事長にしか社宅がないことから、実質的には社宅ではなく、税務上は、単に個人的費用を負担してもらったと考える。会社が支払った家賃全額が給与課税される

税務リスクの検証

上記の「理事長個人の取扱い」について、実際に税務調査でも指摘を受けるのか?について、検討していきます。

まず、平等要件について検証します。人間ドッグの費用負担という論点において、役員や特定の地位にある人だけを対象として、人間ドック費用を負担するような場合には、課税の問題が生じます(所基通36-29)

所基通36-29 使用者が役員若しくは使用人に対し自己の営む事業に属する用役を無償若しくは通常の対価の額に満たない対価で提供し、又は役員若しくは使用人の福利厚生のための施設の運営費等を負担することにより、当該用役の提供を受け又は当該施設を利用した役員又は使用人が受ける経済的利益については、当該経済的利益の額が著しく多額であると認められる場合又は役員だけを対象として供与される場合を除き、課税しなくて差し支えない。

社宅については、役員と従業員を平等に取り扱わないといけないという要件はありません(所基通36-40)。

所基通36-40 使用者がその役員に対して貸与した住宅等に係る通常の賃貸料の額(月額をいう。)は、次に掲げる算式により計算した金額(使用者が他から借り受けて貸与した住宅等で当該使用者の支払う賃借料の額の50%に相当する金額が当該算式により計算した金額を超えるものについては、その50%に相当する金額)とする。ただし、36-41に定める住宅等については、この限りでない。

役員に貸与した住宅等に係る通常の賃貸料の額の算式

税務調査で指摘を受けるのか?

次に、税務調査理論について検証します。理事長だけに社宅があり、従業員向けには、社宅制度や社宅規程がなく、社宅を利用できるとは知らないようなケースも多いです。しかし、このようなケースで、実際の税務調査の現場で課税されたという事例は聞かないです。みなさんも聞かれたことはないのではないでしょうか。

したがって、役員に対する適正な税務上の社宅家賃を徴収している限り、税務調査で指摘を受けるリスクは低いものと考えています。

なお、手術もされる理事長であれば、救急対応等の業務上の緊急性の観点から、社宅を貸与しているという説明もできますね。