一般社団法人型の医療法人の税務リスク

一般社団法人の特徴

医療法人を、一般社団法人で設立することも可能です。一般社団法人でクリニックや病院を運営することもできるということです。実際、一般社団法人型の医療法人も多数存在します。今回は、一般社団法人で設立されている場合の税務上のリスクとその対策について解説します。

まずは、一般社団法人の特徴を知る必要があります。

株式会社では、会社が儲かって内部留保が膨らめば、株価が上昇します。株式は将来の相続財産になるので、上昇した株式の価値に対して、相続時に相続税が課税されます。

これに対して、一般社団法人は、持分のない法人であるため、株式というものが存在しません。法人が儲かって内部留保が膨らんでも、相続税を課税する対象がありません。つまり、内部留保に対する相続税課税がないことが一般社団法人の最大のメリットでした。

一般社団法人を使った節税

例えば、富裕層が節税のために、同族の不動産管理会社を設立するなら、一般社団法人で設立した方が、不動産管理会社の内部留保に対する相続税課税がないため、相続税の節税になるという理由で、一般社団法人がよく設立されていました。

私も関与先に何度かご提案したことがありますが、結局一般社団法人での設立はありませんでした。私の提案が受け入れられなかったことは、今となっては運がよかったと思います。

こういった背景があり、節税を意図した一般社団法人の設立に対して、平成30年度税制改正によりメスが入りました。クリニックや病院を運営する一般社団法人や一般財団法人もこの規制の対象になります。

ただし、次の法人は、特定の者が私的に支配しているとは考えにくいことから、この規制対象から除外されています。

  • 非営利型の一般社団法人・一般財団法人
  • 公益社団法人・公益財団法人

また、現在設立可能な「持分なし医療法人」も除外されています。よって、持分なし医療法人なら、内部留保に対する相続税課税がないメリットを、引き続き享受することができます。

よって、規制対象から除外されていない、通常の一般社団法人・一般財団法人(以下、一般社団法人等)について解説します。

租税回避防止規定

簡単に言えば、一般社団法人の内部留保に対して、相続税を課税するという規定です。さらに、相続税の納税義務者は、一般社団法人等です。

一般社団法人等を、相続税課税の対象とするため、

特定一般社団法人等理事(理事を退任してから5年以内の者を含む)相続が発生した場合、

特定一般社団法人等の貸借対照表の純資産のうち一定額を、死亡して被相続人となった理事から特定一般社団法人等へ遺贈したものとして、特定一般社団法人等に相続税を課税する」という制度が創設されました。

これは「相続税法66の2条」に規定されています。あくまで理事に相続が発生した場合に課税が行われるのであって、理事を交代するだけで課税されることはありません。ポイントを具体的に見ていきましょう。この規定が入ったことで、一般社団法人等を提案する税理士はぐんと減少しました。

特定一般社団法人等とは

一般社団法人等であって、次に掲げる要件のいずれかを満たすものをいいます。簡単に言えば、理事の1/2超を、同族で支配している一般社団法人等ということです。

  1. 被相続人の相続開始の直前における「理事の総数」のうち「その被相続人に係る同族理事の数」の占める割合が2分の1を超えること。
  2. 被相続人の相続の開始前5年以内において、「理事の総数」のうち「その被相続人に係る同族理事の数」の占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。

同族理事とは、一般社団法人等の理事のうち、被相続人またはその配偶者、三親等内の親族その他の被相続人と特殊の関係のある者をいいます。具体的には下図の①~⑤の者です。同族理事には、親族でなくても、被相続人の同族会社の役員や従業員も含まれることが注意点です。

同じ一般社団法人でも、死亡した理事によって、特定一般社団法人に該当したり、該当しなかったりします。つまり、死亡した理事によって、課税される場合と課税されない場合があるということです。しかし、理事の1/2超を同族で支配している一般社団法人等は、確実に課税対象になります。

相続税がいくら課税されるか?

課税対象となる貸借対照表の純資産額のうち一定額は、次の算式により求めます。

純資産額のうち一定額=資産(相続税評価額)-負債-死亡退職金-基金

次に、上記の純資産額のうち一定額を、死亡した理事に対応する金額に均等按分します。

この均等按分後の金額が、死亡した理事の相続財産に加算されます。相続税は超過累進税率のため、相続財産が多ければ多いほど、相続税率が上がります。相続財産に加算される特定一般社団法人等の純資産により、相続税率を押し上げて、遺族の相続税負担をも押し上げる可能性があります。また、一般社団法人が支払う相続税は2割加算の対象となります。

相続税課税を回避または軽減するための対策

ポイントとして、課税対象となるか否かは、理事の構成によります。つまり、社員は誰が就任しても、課税関係には影響しません。一般社団法人の議決権は社員が有しています。よって、改正後も社員は親族でグリップすることが重要です。社員は全員親族で固めても問題ありません。

次に、特定一般社団法人に対する相続税課税を回避または軽減するための対策です。

  • 課税対象から除外されている税法における非営利型の一般社団法人や一般財団法人になる。
  • 同族理事を1/2以下にする。理事が3人であれば、理事長と親族関係のない他人を2人理事に入れる必要があります。
  • 高齢の理事は、相続開始より5年前に辞任して、子や孫に理事を承継すれば相続税の課税なし。
  • (できれば若い)同族理事を増して、純資産を按分する分母を増やし、課税額を減らす。
  • 一般社団法人を解散してしまう。残余財産を、理事なら退職所得、社員である子や孫が一時所得で抜き出す。
  • 内部留保を残さないように役員報酬でコントロールする

医療法人を一般社団法人型で設立されている場合には、税務リスクが伴いますので、特定一般社団法人等に該当することのデメリットも考慮して、一般社団法人型を検討しましょう。

 

特定一般社団法人等の詳しい解説は、平成30年税制改正の解説(財務省)にあります。