かかり増し経費コロナ補助金の税金【個人介護事業所編】
介護事業所のかかり増し経費コロナ補助金
今回は、介護サービス事業所・介護施設における感染症対策支援事業の補助金、いわゆる「かかり増し経費の補助金」の解説です。
感染症対策を徹底した上で、サービスを提供するために必要なかかり増し経費が発生した、すべての介護サービス事業所・介護施設が対象です。
令和3年3月15日の確定申告に向けて、個人の介護事業所が「かかり増し経費」の補助金を受け取った場合の課税関係・税務処理について、徹底解説します。
補助上限額は、 サービス類型ごとに設定されています。例えば、「通所介護事業所(通常規模型)は1事業所あたり892千円」、「訪問介護事業所は1事業所あたり534千円」「介護老人福祉施設(特養)や介護老人保健施設(老健)は38千円×定員数」です。
申請が1回限りであり、一部申請経費が認められなくても補助上限額が受給できるように、補助上限額を超えて申請されていることが多くなっています。
固定資産の取得に充てるための補助金
補助金収入は、介護収入同様に、事業所得の収入金額を構成しますので、最高税率55%であれば、補助金収入の55%が税金として、国へ納税することになります。しかし、国から100もらって、国へ税金として55返還したのでは、補助金の意味が無くなってしまいます。
そこで、固定資産の取得のために、補助金を受給した場合には、補助金収入は事業所得の収入金額から除外することができる特例があります。これは「国庫補助金の総収入金額不算入制度(所得税法42条)」です。この制度には、ポイントが3つあります。
1.国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書を添付して、確定申告を行うこと。
2.固定資産の取得に充てるための補助金に限定されていること
3.固定資産の購入金額から補助金収入を控除した金額を、取得価額として減価償却を行うこと。
1.は、いわゆる確定申告要件です。2.は経費に充てるための補助金には、この制度は使えず、固定資産の取得に充てるための補助金に限定されているということです。
3.の取扱いは、補助金収入を受け取った年に一気に課税するのではなく、毎年の減価償却費を減額することで、補助金収入に対して税金を課税するということです。
つまり、国庫補助金の総収入金額不算入制度を使わなければ、補助金を受け取った年に、事業所得の収入金額となって、一気に課税されます。この制度を使えば、補助金収入には課税しないものの、将来の減価償却費を減額することで、耐用年数の期間に按分して、補助金収入が課税されるというイメージです。
そのため、国庫補助金の総収入金額不算入制度は、課税を免除するのではなく、課税の繰延べ制度という位置づけになります。
国庫補助金の総収入金額不算入を使うか使わないかの判断
国庫補助金の総収入金額不算入制度は、課税の繰延べのため、長期的に見れば、この制度を使っても使わなくても、納付する税金は基本的に同額になります。
まず、国庫補助金の総収入金額不算入制度を使う方が有利なケースを挙げます。所得税は、その年の所得が増加するにつれて所得税率も高くなる超過累進税率が採用されています。国庫補助金の総収入金額不算入制度を使わずに、補助金を受け取った年に一気に課税されると、所得税率が1段階高くなり、不利になることがあります。
よって、国庫補助金の総収入金額不算入制度を使って、将来の減価償却費を減額される方が有利になるケースがあります。
次に、国庫補助金の総収入金額不算入制度を使わない方が有利なケースを挙げます。国庫補助金の総収入金額不算入制度を使うと、補助金収入分を固定資産の取得価額から減額することになりますので、取得価額×10%(7%)で計算される税額控除規定を使う場合には不利になってしまいます。
購入された固定資産が、①経営力強化税制、②商業・サービス業活性化税制、③投資促進税制といった、設備投資系の税額控除3本柱のどれかに該当する場合には、国庫補助金の総収入金額不算入制度を使わない方が有利になります。
経費に充てるための補助金
固定資産に充てるための補助金は、前述のとおり、事業所得の収入金額から控除することができますが、経費に充てるための補助金には、このような取扱いはなく、事業所得の収入金額に加算して申告することになります。コロナのために臨時的にかかった経費支出と補助金収入が相殺されるため、補助金収入に課税されないようなイメージになります。
実際には、固定資産取得費と経費の両方を、補助対象として申請していることが多いと思います。この場合は、補助金収入を固定資産取得費と経費で按分して、固定資産に充てるための補助金、経費に充てるための補助金に区分して、確定申告を行うことになると考えます。
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