医療法人化のメリット
個人開業医と法人の税率差
個人開業医の最高税率は55%です。法人の最高税率は30%程度です。この25%の税率差が医療法人化のメリットです。
解散時には医療法人の残余財産を、役員退職金で抜き出すことになります。ここで退職所得課税として、25%(50%×1/2)の税率で課されたとすると、法人の税率30%+退職所得課税の税率25%=55%となります。これは個人開業医の最高税率と同じです。
このように長期間で考えると、医療法人化したとしても、税率差によるメリットが出ないこともありますが、25%の課税を退職時まで先送りできることはメリットと考えます。資金繰りも楽になり、設備投資もしやすくなります。
25%の税率差が節税効果になるケース
ドクターとなった子へ、事業承継する場合等、医療法人の内部留保を、退職金として抜き出す必要がないケースも想定されます。この場合は、冒頭で記載した25%の税率差が、法人化のメリットになります。
また、退職所得課税の税率が25%まで高まるのは、1億円以上の退職金を支給するケースです。退職金がそれよりも少なければ、退職所得控除や1/2課税といった優遇税制により、ほとんど退職金に税金がかからないケースもあります。この場合も、冒頭で記載した25%の税率差が、法人化のメリットになります。
メリット一覧
医療法人化のメリットを、ひと通り挙げると次のとおりです。
- 個人の最高税率よりも法人の税率は低い
- 分院の開設ができる
- 附帯業務(介護保険事業など)を行うことができる
- 生命保険を損金算入できる
- 役員退職金が支給できる
- 事業承継が簡単
- 社会保険診療報酬の源泉徴収がない
- 設立1、2期は原則として消費税が免税
- 決算月を自由に設定できる
- 給与所得控除が使える
- 欠損金を10年間、繰り越すことができる
分院の開設や介護事業ができる
1人の個人開業医が、複数の医療施設を運営することはできません。新しくクリニックを増設して、さらに事業展開をしていきたいというニーズがあれば、医療法人を設立しなければならないことになります。なお、分院を開設する場合、管理者として常勤医師が必要となり、その常勤医師は理事に就任します。
また、介護保険事業であるデイサービス、グループホーム、有料老人ホームなどのように開設主体の要件に、法人格が要求されている事業についても、医療法人化することにより行うことができます。
事業承継が簡単!
個人事業のクリニックや病院を、親から子へ事業承継する場合、いったん親の事業について、閉院の手続きを行ったあと、子が開院の手続きを行います。これだけでも面倒ですが、相続による承継の場合は、さらに大変です。
施設開設者である院長が死亡した場合は、施設の廃止となり、保健所に「診療所開設者死亡届」を提出します。さらに後継者は、廃止の日(死亡の日)から10日以内に、保健所に「診療所開設届」を提出し、各地方厚生局の定めた期限までに、「保険医療機関指定申請書」も提出しなければなりません。親の相続直後という大変な状況の中で、こういった届出を行うことは精神的にも負担になります。
円滑な事業承継のための対策として、医療法人化が有効です。医療法人であれば、上記のような煩雑な閉院および開院の手続きは不要です。①社員の就任、②理事長の就任、③院長である管理者の就任、④持分の承継手続きだけで、事業承継は完了します。
親子承継だけでなく、第三者承継を円滑を行うために、医療法人化を選択する事例も多くあります。
医療法人化のデメリットは、こちらをクリック